西荻丼:町を書きながら町と繋がる
わたし達は「西荻町学」についてはまだ初心者である。しかし、幸なことに、私たちは経験豊かな先輩達に出会うことができた。その一人が、西荻の地域情報誌「西荻丼」の5代目編集長有田夏希さんだ。
「西荻丼」は手描きのイラストや写真が入った手作り感満載のフリーペーパー。バックナンバーを見せていただきながらにわたし達は「西荻丼」の歴史をうかがった。
「西荻丼」は、やる気いっぱいの28歳デザイナー有田さん、ほか、編集スタッフ達によって、全てボランティアでつくられている。
本業の仕事が休みの日、編集スタッフ達は集まってお茶を飲みながら次回のテーマについて編集会議を開く。おいしいお店、楽しいお店はもちろん、西荻に住む動物たち、地下を流れる暗渠まで紹介する。
最新号の台43号は、西荻のライブハウスの特集だ。有田さんは、この特集を組んだ経緯をこう語った。
「西荻は、意外と音楽を楽しめるところが多いよねという話からスタート。どっちかというとアンティークとか雑貨屋・古本といったイメージが強いんですが、意外と音楽系の店が多いことを伝えたかったんです。メンバーの中にバンドやっていたり、ライブハウスでバイトしている人がいて、それでライブハウスの特集に決めました。テーマが決まったら担当を割り振って、みんなそれぞれインタビューして、写真を撮って、その写真を使ってイラストを起こして、記事と共に掲載しました。」
「西荻丼」は、例えば西荻に引っ越してきたばかりの「西荻初心者」に町を紹介するといっただけのものではなく、西荻丼のボランティアスタッフ達にとっては町と繋がる道になっている。最初の編集者達もうそう思ったそうだ。2014夏の10周年記念号には初代編集長の北尾トロさんと二代目編集長の大宮冬洋さんの対談が掲載されている。北尾さんが西荻に引っ越してきた時、町になかなか馴染めず、どうすれば町の人たちと仲良くなれるかと考えた。もともとライターをしていた方なので、じゃあ、町の人にインタビューをして、自分と同じように引っ越してきた人の役に立つような読み物を作ろうと思った。それで、自分の知り合いのデザイナーやイラストレーターに声をかけてはじめたそうだ。最初のインタビューは西荻案内所からすぐのビリヤード屋のおじさんや、材木屋さんのおじさん。味のある方々だそうだ。
有田さんによると、できあがった「西荻丼」の配布も町の人たちと繋がるチャンスだそうだ。毎号6000部を100以上の店舗に手配りする。「配る時に、お店の方と『最近どうですか~』と少しお話をするようにしています。その時にいろんな感想や、お話を聞けるんです。」
「西荻丼」は、デジタル化はせず、紙で続けていくつもりだそうだ。紙は残るし、いつでも並べて見ることができる。ああ、確かにそうだと、並べられたバックナンバーを見わたして思った。
すばらしい「西荻町学」の先輩達と知り合えて、これからの展開が楽しみになった。(ファーラー、木村、6月24日2015年)