多くの移民と無国籍な食文化
西荻のデリKikuは、多くの移民と無国籍な食文化の店だと言える。
店のオーナーのリナさんがアメリカの西海岸(ロサンゼルス)に住んでいたとき、たくさんの アメリカの移民たちが経営するデリを利用していた。その時に、「こんなスタイル、いいなぁ」と感じていた。そして、日本でもこのスタイルでやってみたく、この店を始めたそうだ。どうして西荻窪に店を開くことを決めたかというと、ムーハン(シンガポールライスの店)に来た時に「ああ、いいなぁ」と思ったからだという。もちろん、お店を出すために他の地域もいろいろ見たのだが、彼女としては地域に密着した店にしたかったため、自分が住んでもいいと思える西荻に決めたということだ。西荻はハレの町ではなく,ケの町なのがいいし、西荻の店ははずれがない感じがした、と。日常のおいしい店としては、西荻が合っていると感じた、と。店名のKikuはオーナーのリナさんの名字が「きく」だからだそうだ。
店長はアメリカ人のSmittyさん。18歳のとき軍人として沖縄へ渡ってきた。それからもう、30年ほど日本に住んでいる。Smittyさんはリナさんと知り合い、そして、デリKikuの経営の片棒を担ごうと決めた。
ここ1年、Kikuでは月1回 の英語料理教室を開催している。 主に、アメリカ各地のSoul Food ―主に黒人料理―を紹介している。スパイスが特徴的だそうだ。とても人気のある教室のようである。
Smittyさんとリナさんは、毎日早朝から料理の準備を始める。料理はソースの一部を除いては、全て手作り。安心、安全を心掛け、季節の野菜をふんだんに使っている。人気は、海老とアポガドのサラダ、グリーングリーン、キッシュ、レバー入りのミートローフ、具だくさんのミネストローネ。今年は10周年なので、いろいろイベントを企画しているとのこと。
そう、Kikuは今年10周年。 現在、お客の中心は常連の方々だそうだ。二人は常連客達の好みを把握していて、顔を見たら好みのものがすぐ出せるぐらい。もう、すっかり地域の食堂である。もちろん、アメリカから渡ってきたわたしも、Kikuのファンである。
Kikuは、人も料理も、多くの移民という経歴を経て、西荻の地元の店となったのである。
(ファーラー、木村、9月29日2015年)